2011年5月9日月曜日

IE9の概要についてまとめておく。

 前版のIE8ではHTMLのレンダリング・エンジンを一新し、標準規格への準拠とセキュリティ機能の強化が主な改良点であったが、今度のIE9の強化ポイントもその延長上にある。IE9の主な改善点は次のとおりである。

  • 高速化——最新CPUGPU対応によるパフォーマンスの向上
  • 相互運用性の向上——HTML5SVGなど、Web標準規格への(さらなる)対応
  • 信頼性/セキュリティ機能の向上——より安全なWebブラウザを目指して
  • 洗練されたユーザー・インターフェイス——Windows 7のユーザー・インターフェイスとの統合

 以前はWindows OS環境向けのWebブラウザといえばInternet Explorerが大きなシェアを占めていたが、最近ではMozilla FirefoxGoogle ChromeSafariをはじめとして、さまざまなブラウザがシェアを伸ばし、さらにお互いに切磋琢磨して進化し続けている。そんな中でリリースされるIE9では当然それらを強く意識しており、標準規格への準拠やセキュリティの強化といった、一見すると「地味な」機能強化だけでなく、見た目(UI)やレンダリング・パフォーマンス、使い勝手の改善といった、分かりやすい点も重視して改善している。

 幸いなことに、ここ数年のCPUやグラフィックス機能(GPU)などの進化は著しく、Windows 7のような(従来と比べると)重いWindows OSでも十分実用的に利用できる環境が整ってきた。そして、Windows 7への移行も好調に進んでいるようである。IE9はそのようなWindows 7にふさわしいWebブラウザとして開発されている。マルチコアCPUGPUを活用してパフォーマンスの向上を図っているだけでなく、Windows 7UI(タスク・バー)と組み合わせて使うと、サイトの閲覧が便利になるような機能も持っている。

 IE9における機能強化点としては、次のようなものが挙げられる。それぞれの詳細については次回以降で解説する。

機能

内容

パフォーマンス向上

JavaScriptエンジンの高速化

マルチコア/マルチスレッド対応の新しいJavaScriptエンジンを採用。フォアグラウンドでJavaScriptコードを解釈しながら、バックグラウンドでネイティブ・コードへコンパイルして実行するが、マルチコアCPUなら両方を同時に実行でき、性能が向上する

GPUの活用

描画処理にDirectX対応のGPUを利用して描画を高速化。HTML5のビデオ/オーディオ再生支援機能の利用、SVGScalable Vector Graphics)描画/CSS3の透過処理、カラー・プロファイル処理などにもGPUを活用。GPUがない場合はDirectXのソフトウェア処理も自動的に行う。GPUの活用によりシステム全体の消費電力も抑制する

ネットワーク・パフォーマンスの向上

DNSの投機的先読み/プリフェッチ、プロキシ用プロセスの集約/プロキシ接続数の増加、キャッシュ・アルゴリズム(キャッシュする内容や期間、削除順を決定するアルゴリズム)の改良など

インストールと起動の高速化

・ユーザーの介入がほぼ不要なインストーラ
・高速な起動処理の実現

新機能/新ユーザー・インターフェイス

簡素化されたデザイン

GUI部品を極力省略し、表示領域を可能な限り最大にする画面デザインおよび初期設定

サイトの固定(ピン止め)

Webサイト・アイコン(ショートカット)のタスク・バー上への配置とジャンプ・リストの提供

ダウンロード・マネージャ

ダウンロードするコンテンツの一括管理ツール

強化されたタブ

タブごとに取り外して単独のウィンドウにしたり、別のウィンドウ上へ移動したりできる

「新しいタブ」ページ・デザインの改良

「新しいタブ」ページにあらかじめサイトを登録しておき、お気に入りサイト機能としても利用できるようにする

ワンボックス入力

従来のアドレス・バーと検索ボックスを兼用する単一の入力欄「ワンボックス」

通知バー

ブラウザからの通知をすべて画面最下部に表示される通知バーに集約

アドオン・パフォーマンス・アドバイザ

アドオンの実行パフォーマンスの測定

セキュリティ/信頼性

ダウンロード・マネージャ

SmartScreenとの連携による保護

ハングアップ耐性の強化

自動クラッシュ回復機能やメモリ保護機能の強化(DLLをロードするアドレス空間をランダマイズするASLR機能の強化)

MIMEスニッフィング

MIMEタイプ指定によらずコンテンツの種類を自動判定するMIMEスニッフィング設定の追加

XSS Filter

IE8リリース後に見つかった脆弱性の改善

ドメインの強調表示

URLのドメイン名の部分を強調表示して分かりやすくする

追跡防止

ユーザーのアクセス行動情報をサード・パーティ・サイトへ渡さないようにするブロック機能

ActiveXフィルタ

サイトごとにActiveXの実行を許可するかどうかを設定する

Web標準規格への準拠

HTML5標準

HTML5 Video (MPEG-4/H.264) Audio (MP3/AAC)HTML5 CanvasHTML Selection APIInline SVGなどに対応

CSS3対応コンポーネント

CSS3 BackgroundBorders Modulebackground-*border-radiusプロパティほか)
CSS3 Color ModuleRGBAHSLHSLAカラー・モデル、opacityプロパティなど)
CSS3 Media Queries Module(デバイス依存属性の取得)
そのほかの詳細は「CSS Compatibility and Internet Explorer[英語]」参照

SVG対応

W3C SVG 1.1 2nd Edの実装、Inline HTMLInline XHTML対応ほか

ECMA Script 5th Edition対応

新しい配列用メソッドの実装、オブジェクト・モデルの拡張ほか

WOFF対応

Web専用フォント・フォーマットWOFFWeb Open Font Format)対応

Color ProfileICC対応

ICC v2/v4対応、TIFFJPEG XR形式画像対応

開発サポート

開発ツールの強化点

ネットワーク・キャプチャ、JavaScriptプロファイリング、高速化

ブラウザ・モード

IE9モード/IE9互換表示モード/IE8モード/IE7モード

ドキュメント・モード

IE9標準モード/IE8標準モード/IE7標準モード/Quirksモード(IE5相当)

IE9の主要な新機能

IE8からIE9にかけて強化/追加された機能のみを列挙している。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿