2011年5月5日木曜日

HTML5に関する「IE9の限界」とIE10への期待

米マイクロソフトが昨年12月に開設した、HTML5仕様のラボサイト「HTML5 Labs」

HTML5に対応し、積極的にウェブ標準化を進めているはずの「Internet Explorer 9正式版」(以下IE9)ではあるが、じつはHTML5の機能をフルに利用できるわけではない。一部実装されていない機能もあるのだ。

W3Cが仕様を策定するまでには、「公開草案初版」「最終草案」「勧告候補」「勧告案」「勧告」という6段階のステップがある。「最終草案」で仕様がおおむね確定され、その後は細かい修正になる。

現在、HTML5はまだ第1段階の公開草案初版の段階。5月には最終草案が発表されると言われているが、いまだ確固たる仕様が決定されていないのだ。そのため、IE9では実装が見送られたのである。

ChromeやFirefoxなどのブラウザーでGmailを使うと、ファイルをドラッグ&ドロップで添付できるのだが……。IE9では機能が制限されているため添付できず、ブラウザー上でファイルが開かれる

例えばオフラインでもウェブページを利用できる「Offline Web Applications」やPCに保存されているファイルをシームレスに扱える「File API」などだ。ウェブ標準化を掲げるだけに、HTML5の主
要ともいえる機能を実装できていない点は、残念な部分ではある。

新機能の搭載よりも動作の安定性を重視したIE9

実装を見送った機能の中には、便利なものも少なくない。前ページで触れた点などが代表的な機能だが、ほかにも搭載されなかった機能は多数ある。

「IE9の仕様がおおむね確定されたのは、昨年の12月なんです。その段階で搭載できた機能は、現状のものが限界だったのかなとは思います。

"Web Socket"や「File API」など、IE9のリリースサイクル中、開発者の方からも「搭載してほしい!」とずっとリクエストをいただいていた機能もあります。われわれとしても成果物として提供したいとは考えていたのですが、最終的な仕様が確定していないあやふやな段階では搭載が難しかったのです。

じつは、IE9ではベータ版の段階から、オンラインバンキングやオンライン証券といったサービス向けに検証支援プログラムを提供し、動作検証をしてきています。BtoCの部分にも、しっかりとした対応するためには、決して保守的ではないのですが、慎重にならざるを得ない状況です。IE9で搭載が間に合わなかった機能は、次バージョンに期待していただきたいですね」

溝口氏の話にもあるように、IE9では残念ながら実装されなかった機能も、次世代の「Internet
Explorer 10」(以下、IE10)では多数搭載されるようだ。

4月12日(米国時間)に、米マイクロソフトがラスベガスで開催した「MIX11」では、早くも「IE10 Platform Preview 1」(以下IE10PP1)が公開され、「Internet Explorer 10
Test Drive」(http://ie.microsoft.com/testdrive/)サイトでダウンロードして利用できるようになっている。

IE10PP1は、開発者向けのプレビュー版ではあるが、HTML5への対応もIE9よりもさらに進められているという。データベースを活用できる"IndexDB"、マシン保存してあるファイルを操作する"FileAPI"など、各種APIをはじめとして、HTML5を完全にサポートする計画だという。このIE10についても、もちろん溝口氏にお聞きした。

溝口 完全に仕様が決まったわけではないのですが、先日リリースしたIE10PP1で、今後追加される機能やAPIが、分かるようになっています。IE9で搭載の間に合わなかったAPIも多数追加されていますね。

現在は英語版しかないのですが、弊社で"HTML5 Lab"という開発者向けのウェブサイトもオープンしています。(ここでは)これから実装を予定しているAPIのプロトタイプを公開しています。

まだ確定しているわけではないのですが、ここに公開されているのは実装を考えているAPIになっています。今後も、プロトタイプのAPIが追加される予定ではありますので、気になる方はHTML5 Labをチェックして、このAPIが入る
のかな?と予想していただきたいです」